2022年に一条工務店で平屋のマイホームを建築した一級建築士のノブユキです。
ハウスメーカーと契約して家づくりを進めていき、打ち合わせを重ね建物についてひと段落した後は、外構工事の計画を進めていくことになります。
外構工事を検討していく上で、ヨド物置やイナバ物置などのプレハブ物置の設置を考えている方は多いと思います。おうちの部分はもちろん確認申請を取っていますが、「プレハブ物置は何も申請せずに建てて良いのか?」このように疑問に思った方もいるのではないでしょうか。
また、設置されているプレハブ物置のほとんどはコンクリートブロックの上に置いてありますが、「建築基準法上OKなのか?」と疑問に思った方もいると思います。
この記事では、そのようなお悩みを解決したいと思います。
- プレハブ物置に確認申請が必要であるか
- プレハブ物置にコンクリートブロック基礎は認められるか
物置の確認申請について
建築物を建築する場合には、建築基準法の規定で確認申請が必要となります。プレハブ物置については、確認申請が必要な場合と不要な場合があります。
確認申請が必要な要件
プレハブ物置の設置で確認申請が必要であるかは、次の要件により変わってきます。
①床面積
②お住いの地域
上記の要件は、あくまで既に建物がある敷地に物置を設置する場合(増築の場合)であり、何も建物がない敷地に物置を設置する場合(新築の場合)には面積に関係なく確認申請が必要となります。
①床面積
床面積が10㎡を超える場合は確認申請が必要となります。
・床面積10㎡以内 → 確認申請は不要
・床面積10㎡超 → 確認申請が必要
②住まいの地域
①で床面積10㎡以内は確認申請が不要と言いましたが、10㎡以内であってもお住いの地域が「防火地域」または「準防火地域」であれば、床面積に関係なく確認申請が必要となります。
・防火地域・準防火地域ではない → 床面積10㎡以内であれば確認申請は不要
・防火地域・準防火地域内 → 面積に関係なく確認申請が必要
プレハブ物置は建築物なのか?
確認申請はあくまで「建築物」を建築(新築、増築など)する場合に必要となります。物置は建築物ではないと勘違いされている方が時々いますが、プレハブ物置は建築物です。その理由については下記のとおりです。
「建築物」は建築基準法で定義が定めれています。
建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、・・・をいい、建築設備を含むものとする。
この「土地に定着する工作物」という点で、ヨド物置やイナバ物置などのプレハブ物置を、地面やコンクリートブロックの上に置いているだけでは土地に定着していない、つまり建築物ではないと考えている方が時々います。
この「土地に定着」というのは、物理的に地面に固定されているという意味ではなく、「随時かつ任意に動かせない状況」のものも土地に定着すると判断されますので、地面に固定せず、ブロックの上に置いてあるプレハブ物置であっても建築物に該当します。
例外として、小規模な物置は建築物ではない
例外として、「外部から荷物の出し入れを行うことができ、かつ、内部に人が立ち入らない小規模な物置」については建築物に該当しません。
この「外部から荷物の出し入れを行うことができ、かつ、内部に人が立ち入らない小規模な物置」については、市や県によって取り扱いが変わりますが、多くの市や県では下記の基準が用いられています。
①奥行きが1m以内
②高さ1.4m以下
この基準に合致している物置の場合、多くの地域では建築物に該当しませんので、確認申請や建ぺい率・容積率などの建築基準法の規定が適用されません。
確認申請が必要なプレハブ物置
お住まいが防火地域・準防火地域ではなく、面積が10㎡以下であれば確認申請は不要です。
注意していただきたいのが、防火・準防火地域以外で10㎡以下の物置であれば確認申請は不要ですが、建ぺい率・容積率・構造規定など諸々、建築基準法に適合させる必要はありますので、混同しないようにしてください。
あくまで、確認申請が不要ということだけです。
確認申請を行わないと一体どうなる?
防火地域・準防火地域での物置の設置、または床面積10㎡を超えるプレハブ物置の設置では確認申請が必要となります。
確認申請が必要である規模等であるにもに関わらず、確認申請を行わなかった場合に一体どうなるのか、考えられる内容はいくつかあります。
①役所から違反建築物として指導される
②売却するときの弊害となる
③安全であるか不明
①役所から違反建築物として指導される
役所から違反建築物として指導されるおそれがあり、最悪の場合は解体命令が出される可能性もあります。
行政は定期的にパトロールを行い、違反建築物が確認された場合は違反指導を行っています。しかし、プレハブ物置で違反指導をされたという話は聞いたことがほとんどありません。パトロールはしていますが、実態としては近隣住民などからの通報がない限りは違反指導がされないことがほとんとです。
ですが、「違反指導されないのであれば確認申請をしなくても良いかな」と安易に思ってはいけません。
現状はそうであったとしても、今後どこかでプレハブ物置による重大な事故が発生した場合は、行政が無確認のプレハブ物置の違反指導を強化するおそれがあります。
違反建築物として指導された場合は、建てられたプレハブ物置が建ぺい率や容積率、構造など建築基準法に適合しているものであれば、手続き違反というだけで解体命令まではされないことが多いです、(建築基準法に適合しているかの証明は建築士に依頼する必要があり、費用は数十万円になると思われます。)
②売却するときの弊害となる
家の売却をする時は不動産屋業者に仲介を頼むこととなります。不動産業者は該当物件が確認申請や完了検査を受けているかを役所に確認しに行き、台帳記載事項証明書というものを取得し、適法な物件であるかを調査します。
現在は、敷地内のプレハブ物置が確認申請を行っていなくても売却は可能だとは思いますが、情勢が変わってくるとプレハブ物置を解体してからでないと売却できないことになるかもしれません。
一昔前は確認申請は行い、完了検査を行っていない建物が非常に多くありましたが、現在は、完了検査まで受けるは常識となっています。このように、今はプレハブ物置の確認申請を行わない方が多いかもしれませんが、将来的に確認申請と完了検査を受けることが当然となる世の中になるかもしれません。
昔は、「確認済証を取得すること」「中間検査を行うこと」が銀行や住宅金融公庫の融資の条件でした。現在は、完了検査を受け、「検査済証」が無いと融資されないため、完了検査を受けることが一般常識となっています。
③安全であるか不明
確認申請を行う場合には、建築士に設計・手続きを依頼することとなります。建築士が設計する場合には当然安全性についても検討を行います。
建築士を介さず外構業者だけで設置した場合でも、きちんと施工を行い安全である可能性も否定はできませんが、強風時などの安全性について担保がありません。
確認申請を行う場合は必ず建築士が間に入りますので、安全性の担保があります。
プレハブ物置の基礎にコンクリートブロックは可能か?
周りのお宅に建てられているプレハブ物置のほとんどは、CB(コンクリートブロック)の上に建てられていると思いますが、CB基礎でも良いのかどうか解説します。
建築物の基礎は原則鉄筋コンクリート造
平成12年建設省告示第1347号において、建築物の基礎は、原則鉄筋コンクリート造であることが定められています。ですが、構造計算を行って安全性が確かめられた場合や、特定の条件の建築物であれば鉄筋コンクリート造以外でも可能となります。
面積によってはコンクリートブロックでも可能
平成12年建設省告示第1347号(改正:平成29年9月4日国土交通省告示第813号)において、下記のいずれかに該当する場合を除き、鉄筋コンクリート造の基礎にしなければならないと規定されています。(つまり、下記のいずれかに該当すれば鉄筋コンクリート造の基礎としなくても良い。)
①木造の建築物のうち,茶室,あずまやその他これらに類するもの
②延べ面積が10平方メートル以内の物置,納屋その他これらに類するもの
つまり、10㎡以内の物置であれば、鉄筋コンクリート造以外の基礎でも可能となります。
従前は、鉄筋コンクリート造の基礎としなくても良い要件として「木造の建築物のうち、茶室、あずまやその他これらに類するもの又は延べ面積が十平方メートル以内の物置、納屋その他これらに類するものに用いる基礎である場合」と定められており、10㎡以内の物置については木造に限られていました。しかし、平成29年の告示改正により木造以外にも適用されるようになりました。
コンクリートブロックの上に載せるだけはNG
10㎡以内の物置であれば、鉄筋コンクリート造の基礎としなくても良いということはわかりましたが、ただコンクリートブロックの上に物置を載せても良いというわけではありません。
国土交通省の見解(告示改正時のパブリックコメント)では、下記のようなことを言っています。
国交省の見解をかみ砕くと、「鉄筋コンクリート造以外の基礎でも良いけど、安全性が確かめられた基礎である必要があるよ!」と言っており、緩和しているからといって基礎は何でも良いということではないということです。ここで、「構造耐力上安全なものであることが確かめられた基礎」とありますので、構造耐力上安全であることの担保が必要です。
ですが、構造設計を実務としている建築士ならまだしも、いち個人や外構業者が構造耐力上安全であることを確かめるのは容易ではありません。
ではどうしたら良いか?ということになりますが、プレハブ物置メーカーの仕様通りに施工することが、構造耐力上安全であることの担保の一つになるでしょう。
物置メーカーは安全であることを確かめた上で施工要領を作成しているはずですからね。
プレハブ物置メーカーの施工要領では、ブロック基礎の場合には必ず転倒防止措置を行うよう記載されていますので、下記のような転倒防止措置を行う必要があります。
・地面が土の場合:地中にコンクリートを打ち込んでアンカー固定
・地面が土間コンクリートの場合:土間コンクリートにアンカー固定
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まとめ
プレハブ物置に設置に関して確認申請が必要な要件、基礎についてまとめると下記の通りです。
①防火地域・準防火地域での物置の設置(床面積関係なし)
②床面積10㎡を超える物置の設置
①床面積10㎡を超える場合:鉄筋コンクリートの基礎(布基礎など)
②床面積10㎡以内:メーカーの施工要領通りであればブロック基礎でも違法とはいえない
これからプレハブ物置の設置を検討している方が、建築基準法に違反しないよう気を付けて計画しましょう。
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