インターネットや不動産屋で土地探しを行っている際に「用途地域」という単語を目にすると思います。
用途地域とは都市計画法によって定められている地域のことであり、用途地域ごとに建築可能な建物、規模、高さ制限が異なります。
ライフスタイルや希望する住環境によってどの用途地域が最適かは人それぞれです。
自分の理想に沿った住環境はどの用途地域なのか、各用途地域の特徴について解説します。
各用途地域の特徴
⑨までは、①から始まり⑨の数字に近づくほど色々な種類の施設・建物が混在する地域となります。
①第一種低層住居専用地域
【都市計画法上の位置付け】
低層住宅に係る良好な住居の環境を保護する地域
- 10m又は12mの絶対高さ制限が定められているため高い建物は建てられない(3階程度まで)
- 北側斜線制限という北側の土地の日照確保に関する高さ制限があるため、敷地が狭くても日照がある程度確保できる
- 住宅(アパート・マンション含む)、小中学校、幼稚園、診療所、保育園、老人ホームなどの福祉施設が建てられる
- 飲食店や物販店などの店舗単独は建てられず、小規模な住宅兼店舗は建築可能
- 原則、店舗や事務所は建築不可のため住環境は最も良い
- 買い物には不便
②第二種低層住居専用地域
【都市計画法上の位置付け】
主として低層住宅に係る良好な住居の環境を保護する地域
- 10m又は12mの絶対高さ制限が定められているため高い建物は建てられない(3階程度まで)
- 北側斜線制限があるため、敷地が狭くても日照がある程度確保できる
- ①第一種低層住居専用地域に建築可能なものに加えて、2階以下で150㎡以内の小規模な店舗(コンビニ程度)・飲食店が建築可能
- 住宅街においてちょっとした買い物が可能となるエリア
③第一種中高層住居専用地域
【都市計画法上の位置付け】
中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護する地域
- ②第二種低層住居専用住宅に建築可能なものに加えて病院、大学、2階以下で500㎡以下の店舗・飲食店が建築可能
- 絶対高さ制限はないため、4階建て以上のマンションなど日照に影響のある高い建物が建築可能
- 北側斜線制限はあるが①②の地域より緩い制限のため、敷地南側に高さ10m超の高い建物ができる可能性がある。
- 店舗が混在した住宅街のエリア
④第二種中高住居専用地域
【都市計画法上の位置付け】
主として中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護する地域
- ③第一種中高層住居専用地域に建築可能なものに加えて、2階以下で1,500㎡以下の店舗・飲食店・事務所などが建築可能
- 絶対高さ制限はないため、4階建て以上のマンションなど日照に影響のある高い建物が建築可能
- 北側斜線制限はあるが①②の地域より緩い制限のため、敷地南側に高さ10m超の高い建物ができる可能性がある
- 日常生活において必要とされる利便施設が建築可能なエリア
⑤第一種住居地域
【都市計画法上の位置付け】
住居の環境を保護する地域
- ④第二種中高層住居専用地域に建築可能なものに加えてホテル、水泳場などの運動施設、3,000㎡以下の店舗・飲食店・事務所などが建築可能
- 日照に関する高さ制限(北側斜線制限、日影規制)が上記①~④の用途地域に比べて無い又は緩くなり、日照に大きな影響のある大規模マンションも建築可能な地域である
- 上記①~④の用途地域に比べて商業施設などが多くなる
- 閑静な住宅街より生活利便性を求める人にオススメ
⑥第二種住居地域
【都市計画法上の位置付け】
主として住居の環境を保護する地域
- ⑤第一種住居地域に建築可能なものに加えて1万㎡以内のゲームセンター・カラオケボックス・パチンコ屋などの遊戯施設・店舗・飲食店などや50㎡以下の工場、300㎡以下の駐車場などが建築可能
- 日照に関する高さ制限(北側斜線制限、日影規制)が上記①~④の用途地域に比べて無い又は緩くなり、日照に大きな影響のある大規模マンションも建築可能な地域である
- ⑤第一種住居地域よりも大規模な店舗・飲食店や遊戯施設も建築可能なエリア
※建築基準法上はパチンコ屋が建築可能なエリアだが、大抵は都道府県の風営法条例で規制されていて建築はできないことが多い) - ⑤第一種住居地域に比べてより一層賑やかなエリア
⑦準住居地域
【都市計画法上の位置付け】
道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護する地域
- ⑥第二種住居地域に建築可能なものに加えて作業場面積150㎡以内の自動車修理工場、客席面積200㎡未満の映画館などが建築可能
- 日照に関する高さ制限(北側斜線制限、日影規制)が上記①~④の用途地域に比べて無い又は緩くなり、日照に大きな影響のある大規模マンションも建築可能な地域である
- 主に幹線道路沿いのエリアで自動車関連の店舗が多くなるエリア
⑧近隣商業地域
【都市計画法上の位置付け】
近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進する地域
- ⑦準住居地域よりも建築可能範囲が広がり、店舗・飲食店・事務所・映画館など各種店舗の面積の制限なく建築可能
- 環境悪化のおそれの少ない150㎡以下の工場の建築も可能な地域
- 生活利便性が高く、人・車の往来が多くとても賑やかなエリア
⑨商業地域
【都市計画法上の位置付け】
主として商業その他の業務の利便を増進する地域
- ⑧近隣商業地域に建築可能なものに加えて風俗施設が建築可能
- 比較的大きな駅の駅前に多い地域
- 生活利便性はとても高いが、閑散とは程遠く騒々しいエリア
⑩準工業地域
【都市計画法上の位置付け】
主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進する地域
- 風俗施設、環境悪化のおそれの大きい工場や危険性の高い工場を除きほぼ全ての建物の建築が可能
- 工場だけではなく、戸建て・大規模マンション・大規模店舗など多岐に渡り建築が可能
- 工場が建築可能なため騒音の発生リスクがある
- 中小の工場、戸建て住宅、マンション、店舗が混在する地域
⑪工業地域
【都市計画法上の位置付け】
主として工業の利便を増進する地域
- 危険物を扱う工場、大きな騒音・振動を伴う工場など、どんな工場でも建築が可能
- 戸建て・マンションも建築可能であるが、学校・病院・映画館などは建てられなく、1万㎡までの各種店舗が建築可能
- 住居のための地域ではないため騒音・振動など住環境として好ましくはないエリア
⑫工業専用地域
【都市計画法上の位置付け】
工業の利便を増進する地域
- どんな工場でも建築可能であるが、住宅・店舗・飲食店などは建てられない
- 工業団地などがこの用途地域である
- 住宅は建てられないため土地探しをする上で選択肢として出てきません
⑬田園住居地域
【都市計画法上の位置付け】
農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護する地域
- ①第一種低層住居専用地域に建築可能なものに加えて、2階建て以下で500㎡以下の農産物直売所・農家レストランが建築可能
- 閑静な住宅街と農業が調和したエリア
- 令和4年3月31日時点では北海道の門別町にしか存在しない地域
市街化調整区域 (正確には市街化調整区域は用途地域ではありません)
【都市計画法上の位置付け】
市街化を抑制する地域
- 基本的に店舗や住宅の建築はできないが、一定条件を満たせば住宅や店舗の建築は可能
- 管轄の市町村によって建築可能となる細かい条件は違うが建築のハードルは高い
- 主に市街地から離れた位置にあり、畑や田園、空き地などが広がっている区域
土地探しにおいて注意するポイント
- 現段階での周囲の状況がいつまでも続くとは限らない
- 土地自体の用途地域だけに注目せず、周辺の用途地域を確認する
現在、南側に空き地や低層建物が立ち並び日照の条件の良い土地であった場合でも、マンションなど中高層の建物が建てられる地域では、将来的に高い建物が建ち日照を阻害するリスクがあります。
希望する用途地域の土地であった場合でも油断は禁物です。
その土地の周囲に用途地域の境界があるかを確認しましょう。
工業系の用途地域が隣接していていると近くに工場が建設されるリスクがあります。
また、閑静な住宅街を希望していても、他の用途地域が隣接していると近くに店舗ができるリスクがあります。
市役所のホームページで用途地域が記載されている「都市計画図」を閲覧できる市町村が多いため、ホームページで周辺の用途地域も確認した方が良いでしょう。
まとめ
店舗が少なく買い物には不便ですが、高い建物が建てられることがなく日照を確保しやすい用途地域。
逆に店舗が多く利便性は高いですが、近隣に高い建物が建っている、または建てられる可能性があり日照を確保しにくい用途地域など、各用途地域にはメリット・デメリットがあります。
ご自身のライフスタイルに合った用途地域の見当は付きましたでしょうか?
土地探しの際には、周囲の状況など現状に目が行きがちとなるのは当然だと思います。しかし、「用途地域」というものを理解すると、より将来を見据えた土地探しを行えます。
イラスト出展:国土交通省 近畿地方整備局 https://www.kkr.mlit.go.jp/kensei/town/tosi/03yototiiki.html
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