2022年に一条工務店で平屋のマイホームを建築した一級建築士のノブユキです。
ハウスメーカーと契約して家づくりを進めていき、打ち合わせを重ね建物についてひと段落した後は、外構工事の計画を進めていくことになります。
外構工事では、駐車スペースにカーポートを建てたいと考えている人も多いと思いますが、カーポートの建築には注意が必要です。それは、、、
建築確認申請が必要です!
役所や専門機関が、予定建物が建築基準法に適合しているかを図面や構造計算書などで確認することです。適合していれば「確認済証」が交付され、そこでようやく工事に着手することができます。
しかし、実態は9割以上のカーポートで確認申請を行っていません。
この記事では、カーポートに確認申請が必要な理由、確認申請を行わない場合の危険性などを解説します。また、確認申請を行った我が家のカーポートの事例もご紹介します。
我が家は建築基準法に適合しているカーポートを建てています。別記事では、建築基準法適合品のカーポートの費用を含めた、我が家の外構工事全体の内訳を公開していますので、建築基準適合品のカーポートの費用が気になる方は併せてそちらもご覧ください。
なぜ確認申請が必要なのか?
確認申請が必要な建物
すべての建物について確認申請が必要なわけではありません。確認申請が必要な建物の条件は次のとおりです。
新築建物:すべての建物で確認申請が必要
増築建物:増築する部分の面積が10㎡を超える場合は確認申請が必要
※防火地域・準防火地域の土地の場合は、増築面積に関わらず確認申請が必要
住居がある敷地内に新たにカーポートを建てる場合は、建築基準法上で「増築」となります。2台用のカーポートで30㎡程度、1台用でも15㎡程度はあるため、大抵のカーポートの増築には確認申請が必要となります。
確認申請が必要なこれらの内容については、都市計画区域、準都市計画区域などの区域内に限ります。区域外の土地ではカーポート程度の規模であれば確認申請は不要となります。
人が住むような所は都市計画区域などの区域内であることがほとんどです。
カーポートで確認申請が行われない理由
カーポートで確認申請が行われない理由はいくつか考えられます。
①外構業者の確認申請への意識が低い
②費用が高くなる
③建ぺい率違反となる
理由① 外構業者の確認申請への意識が低い
カーポートの建築については、ハウスメーカーで住居建物を建てた後に外構業者に別途依頼して建てることが多いと思います。
ハウスメーカーの外構は費用が高くなる傾向があるといった理由もありますが、ハウスメーカーによっては、住居建物と外構を完全に切り離し、外構については請け負わないという場合があるためです。(一条工務店は正にそのパターンです)
ハウスメーカーは建物を建築する会社のため、販売する商品に建築基準法が必ず関係してきますが、外構業者さんというものはエクステリアなど建物の外回りの工事がメインとなるため、普段の業務で建築基準法はあまり関係してきません。
外構業者さんは、主に塀、物置やカーポートを建てる場合にようやく建築基準法が関わってきます。現状、カーポートで確認申請を行っているもの自体が少ないという世の中の状況のため、「確認申請をしなければならない建物」という認識が低い(無い)、または「確認申請をしなければならないのはわかっているが、しなくても問題化されない」と考えるなど、建築基準法を遵守するという意識が低い業者さんが多数いると考えられます。
多くの場合、外構業者やホームセンターにカーポートの注文をすると、確認申請を行わない前提で話が進みます。
私がカーポートを建てる際に、外構業者さんに確認申請を行いますと伝えると、とても驚いていました。
理由② 費用が高くなる
確認申請を行うとなると、役所や指定確認検査機関という専門機関で確認申請の手続きを行わなければなりません。確認申請のための書類作成費や、手続きの手間代などの手続き費用が上乗せされます。
手続き費用については、頼む業者や設計事務所にもよりますが10万円以上となると思われます。
私は自分で手続きを行いましたが、簡単な図面であっても図面作成時間はある程度掛かりますし、役所の窓口に訪れる回数も多いため、業務として行う場合は申請費用を加味すると10万円はもらいたいなという印象です。
①申請時
②設計図書の訂正
③確認済証の受取り
④完了検査の申請(その後、現地での完了検査)
⑤検査済証の受取り
役所への訪問は5回、現地立会いは1回ありました。
また、基礎の大きさについても、通常はメーカーの規定の寸法よりも小さく作られることが多いため、確認申請を通そうとした場合は基礎が通常よりも大きくなり、掘削量やコンクリート量も多くなりその分費用が高くなります。
理由③ 建ぺい率違反となる
先程、カーポートの建築については、ハウスメーカーで住居建物を建てた後に外構業者に別途依頼して建てることが多いと言いましたが、その理由の一つとして、建ぺい率違反となるためハウスメーカーでの建築を断られ、外構業者に別途依頼するパターンもあります。
「敷地面積に対する建物の水平投影面積(建物を真上から見た場合の見掛け上の面積)の割合」のことで、その土地の地域によって、50%などの規定があります。
建ぺい率が50%の地域で敷地面積が200㎡の土地を例にすると、その土地は水平投影面積100㎡分の建物しか建てられないため、水平投影面積100㎡分の住居建物を建てた場合は、建ぺい率オーバーとなるためカーポートや倉庫を敷地内に建てることができません。
理由①にも関連してきますが、ハウスメーカーに断られた場合であっても、建築基準法への意識が低い外構業者さんの場合は、建ぺい率違反にも関わらずカーポートを建ててしまうといったケースが考えられます。(違反建築物のため、確認申請を出しても確認通知書は交付されない)
外構業者すべてが建築基準法に対して意識が低いわけではありませんので誤解をしないよう注意してください。違反建築物となるため建築を断る外構業者さんもいます。
確認申請を行わないと一体どうなる?
確認申請を行わなかった場合に一体どうなるのか。考えられる内容はいくつかあります。
①役所から違反建築物として指導される
②売却するときの弊害となる
③メーカーの基準通りに建てられない
①役所から違反建築物として指導される
役所から違反建築物として指導されるおそれがあり、最悪の場合は解体命令が出される可能性もあります。
行政は定期的にパトロールを行い、違反建築物が確認された場合は違反指導を行っています。しかし、カーポートで違反指導をされたという話は聞いたことがほとんどありません。パトロールはしていますが、実態としては近隣住民などからの通報がない限りは違反指導がされないことがほとんとです。
ですが、「違反指導されないのであれば確認申請をしなくても良いかな」と安易に思ってはいけません。
現状はそうであったとしても、今後どこかでカーポートによる重大な事故が発生した場合は、行政が無確認カーポートの違反指導を強化するおそれがあります。
違反建築物として指導された場合は、建てられたカーポートが建ぺい率や構造耐力など建築基準法に適合しているものであれば、手続き違反というだけで解体命令まではされないことが多いです、(建築基準法に適合しているかの証明は建築士に依頼する必要があり、費用は数十万円になると思われます。)
②売却するときの弊害となる
家の売却をする時は不動産屋業者に仲介を頼むこととなります。不動産業者は該当物件が確認申請や完了検査を受けているかを役所に確認しに行き、台帳記載事項証明書というものを取得し、適法な物件であるかを調査します。
現在は、敷地内のカーポートが確認申請を行っていなくても売却は可能だとは思いますが、情勢が変わってくるとカーポートを解体してからでないと売却できないことになるかもしれません。
一昔前は確認申請は行い、完了検査を行っていない建物が非常に多くありましたが、現在は、完了検査まで受けるは常識となっています。このように、今はカーポートの確認申請を行わないことが一般的ですが、将来的に確認申請と完了検査を受けることが当然となる世の中になるかもしれません。
昔は、「確認済証を取得すること」「中間検査を行うこと」が銀行や住宅金融公庫の融資の条件でした。現在は、完了検査を受け、「検査済証」が無いと融資されないため、完了検査を受けることが一般常識となっています。
③メーカーの基準通りに建てられない
カーポートの基礎については、リクシルなどのメーカーが基準の寸法を定めておりますが、確認申請を行わないカーポートについては、必ずと言って良い程メーカー基準値より小さく作られます。
メーカーは構造計算を行い、建築基準法に適合している旨の資料を公表しています(確認申請を出す場合はこの資料を使用します。)。その際、商品によってどれくらいの大きさの基礎が必要であるか定めています。
(引用:リクシルHP)
このように小難しい資料が公開されています。
我が家のカーポートは、2台用で屋根が軽いポリカーボネート板の柱が4つあるタイプを建てました。上記資料やその他資料を基にし、幅・高さ共に50cmの基礎が必要となりましたが、ご近所のカーポートを見てもらえればわかるのですが、大抵は30cm角の基礎が作られることとなります。
我が家は軽い屋根で4本柱があるタイプなので50cm角の基礎でししたが、屋根が重い金属屋根や、柱が片側しかないような場合には更に大きい基礎が本当は必要となります。
メーカーの基準値未満であるので、台風などの強風時に基礎が持たなく、引き抜かれる可能性があります。
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まとめ
現在は、カーポートの確認申請を行わないことが一般的でありますが、世の中の情勢は目まぐるしく変わっていきますので、確認申請を行っていないカーポートが非常識といった世の中に変化する可能性もあります(今も法律違反になってしまいますが。)。
建築基準法の規定よりも構造的に弱いカーポートの場合は、強風により引き抜かれ、近隣住宅に被害を及ぼす可能性もあります。このため、多少費用が掛かってしまうかもしれませんが、自分の身を守るためにもカーポートの確認申請を行うことをオススメします。
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