2022年に一条工務店で平屋のマイホームを建てた一級建築士のノブユキです。
「シックハウス症候群」という言葉をご存じでしょうか?
新築住宅やリフォーム後の住宅において、目がチカチカしたり、頭痛、のどの痛み、めまい、吐き気などの症状が起きることがありますが、この一連の症状を「シックハウス症候群」と言います。
シックハウス症候群は、「ホルムアルデヒド」という建材や家具などに使用されている化学物質が原因の一つと言われています。昔と違って、現在の建材はホルムアルデヒドの発散量がとても少なくなっていますが、体質によって症状は出てしまいます。
この記事では、壁・天井に使用する石膏ボードの種類を変えることで、空気中のホルムアルデヒドの量を更に少なくするシックハウス症候群の予防・対策方法を解説します。
ホルムアルデヒドとは?
ホルムアルデヒドとは、私たちの身の回りで多く使用されている揮発性の化学物質で、シックハウス症候群の原因の一つと言われています。
主な用途は、合成樹脂の原料、接着剤、塗料、防腐剤など数多くのものに使用されていて、住宅では特に接着剤として建材や家具に多く使用されています。
ホルムアルデヒドの使用制限
建材のホルムアルデヒドの発散量(発散速度)に関しては、JIS(日本産業企画)やJAS(日本農林規格)によって基準が設けられています。発散量によりF☆☆☆☆(エフフォースター)、F☆☆☆、F☆☆の3段階で分類されます。
F☆☆☆☆:5μg/㎡h以下
F☆☆☆:5~20μg/㎡h以下
F☆☆:20~120μg/㎡h以下
建築基準法では、内装仕上材に関して等級ごとの使用面積が定められていて、発散量が少ない建材しか使用できません。しかし、それでも敏感な体質の人は目や鼻などの粘膜や気管を刺激し、シックハウス症候群を引き起こしてしまうおそれがあります。
建築基準法による使用制限
建築基準法による区分 | ホルムアルデヒド発散速度 | JIS、JASなどの等級 | 制限内容 |
---|---|---|---|
規制対象外 | 5μg/㎡h以下 | F☆☆☆☆ | 制限なしに使える |
第3種ホルムアルデヒド 発散建築材料 | 5~20μg/㎡h以下 | F☆☆☆ | 使用面積に制限がある |
第2種ホルムアルデヒド 発散建築材料 | 0~120μg/㎡h以下 | F☆☆ | |
第1種ホルムアルデヒド 発散建築材料 | 120μg/㎡h超 | - | 使用禁止 |
ホルムアルデヒドを吸収・分解する石膏ボード「ハイクリンボード」
住宅の壁や天井の壁紙の下地には写真の様な石こうボードが使用されています。
通常、下地材として使用される石こうボードは「普通石こうボード」という種類のものが使用されますが、これを吉野石膏(株)の「ハイクリンボード」に変えることでシックハウス症候群の予防・対策を図ることができます。
ハイクリンボードの効果
「ハイクリンボード」とは、石膏ボードの80%のシェアを誇る吉野石膏(株)の製品の名前です。
ハイクリンボードは、シックハウス症候群の主な原因物質であるホルムアルデヒドを吸収し、ボード内に含まれる分解剤により、無害な物質と水に分解します。ただ吸収されるのではなく、分解するため再放出されることもありません。
このため、空気中のホルムアルデヒドが少なくなり、シックハウス症候群を予防することができます。
建材に含まれるホルムアルデヒドは、年数を追うごとに発散量が少なくなっていくため、新築直後やリフォーム直後がホルムアルデヒド発散量が一番多くなります。
ハイクリンボードを使用することにより、新築・リフォーム直後や新しい家具から発生するホルムアルデヒドを短時間で吸収・分解し、安全で快適な室内空間を作ります。
・ホルムアルデヒドを吸収・分解して再放出させない。
・エアコンや空気清浄機と違い、ランニングコストが掛からずに空気環境を良好にする。
ハイクリンボードに調湿機能をプラスした「ハイクリン スカットボード」という商品もあります。
ハイクリンボードは高い?
吉野石膏(株)の普通石こうボードである「タイガーボード」と「ハイクリンボード」の製品自体の価格差は、1.3倍程度となっています。
ただし、注文住宅で石こうボードをハイクリンボードに変えた場合は、壁に要する費用が単純に1.3倍高くなるということではないでしょう。
標準仕様で使用する普通石こうボードは、メーカーに大量発注することで定価から大幅に値引きされていることが考えられます。
このため、使用頻度の少ないハイクリンボードは普通石こうボード程の値引き率が採用されているとは考えにくく、1.3倍よりも高い価格差があると思われるため、詳しい価格差はハウスメーカーに問い合わせるのが良いでしょう。
こんなにもある!ホルムアルデヒドの発生源
ホルムアルデヒドは住宅の内装(壁紙など)、家具、フローリングなどの接着剤や塗料など様々なものに使われています。
また、目に見える部分だけではなく、下地材の木板の接着材にも使用されたりなど、目に見えないところからもホルムアルデヒドが発散されています。
ホルムアルデヒドは室内温度が高くなるほど発散量が多くなるため、夏場はより多くのホルムアルデヒドが発散されることとなります。
また、家具については輸入家具に気を付けなければなりません。
国内の製品についてはホルムアルデヒドに配慮してF☆☆☆☆としているものが多いですが、海外製品の家具についてはそのような配慮されていない可能性があるため注意が必要です。
建築基準法では、家具のホルムアルデヒドについては規制されていません。
まとめ
シックハウス症候群の原因の一つなる「ホルムアルデヒド」は様々な物に含まれているため、家づくりを行う上で完全に無くすことはほぼ不可能です。
シックハウス症候群の予防・対策として、ホルムアルデヒドの発散量を少なくすることはもちろんですが、この記事で解説したようにハイクリンボードを使用することで、発散されたホルムアルデヒドを減少させるという対策方法もありますので、家づくりの参考としてください。
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