断熱材とは、暖気や冷気といった熱を通しにくい材料のことです。建物の外壁や屋根・床などの外部に面する部分に設けることで、外の暑さや寒さを遮断する役割を持っています。
断熱材がなぜ熱を通しにくいかというと、熱伝導率が低いからです。
1mの厚みで両端に1℃の温度差がある時に1秒間に流れる熱量を言い、数値が小さいほど(0に近いほど)断熱性能が優れている断熱材ということになります。
コンロの火に金属製のスプーンを当てると、持っている部分まですぐ熱くなっていくと思いますが、割りばしをコンロの火に当てても、持っている部分の温度は高くなりません。これは、金属の熱伝導率が高く、木の熱伝導率が低いからです。
断熱材は、木よりも非常に低い熱伝導率の建材を使用しています。
断熱材は大きく分けると3種類
①繊維系
②発砲プラスチック系
③天然素材系
①繊維系の断熱材
ガラスなどの元となる素材を繊維状にしたものを凝縮させたものです。絡み合わせて繊維の間に空気を閉じ込め、空気層を作ることで断熱効果を生み出します。
いくつか元となる素材はありますが、鉱物を原料とした断熱材は「無機質系断熱材」、木質系素材を使用した断熱材は「木質繊維系断熱材」と呼ばれています。
無機質系断熱材
グラスウール
- ガラスを繊維状にしたもので、価格も手頃で広く普及しています。
- 素材がガラスのため、シロアリなどの害虫被害や火災に強いという特徴があります。
- グラスウールは内部結露しやすいと言われがちですが、これは誤解で、素材自体に吸湿性はありません。
- 断熱材に隙間があったり防湿シートの施工不良など、防湿対策が不十分であると内部結露の発生のおそれがあります。(ガラス繊維表面や繊維同士を繋ぎとめる接着剤に微小な水蒸気吸着力はありますが、ごく僅かなためほとんど吸湿性はないといえます。)
- 内部結露はどの素材でも起こる可能性があるため、グラスウールに限らず防湿対策をしっかり行う必要があります。
- 吸音効果もあるため防音材としても利用されます。
- 通常のグラスウールの繊維径よりも細い繊維を使用し、単位容積当たりの繊維本数が増えることで、より高い断熱性能を持つ高性能グラスウールというものもあります。
- 熱伝導率は製品やグレードによって変わりますが、0.033~0.050W/(m·K)程度です。
結露をしてしまうと断熱性能がガクンと落ちてしまうワン!
密度によって熱伝導率に幅があるワン!
- 価格が安価
- シロアリなどの害虫被害に強い
- 耐火性がある
- 防湿対策をしっかり行う必要がある
- 吸音効果がある(高音域に効果的)
- さらに性能の高い高性能グラスウールがある
- 熱伝導率は0.033~0.050W/(m·K)程度
ロックウール
- 玄武石や天然岩石を繊維状や綿状にしたもので「岩綿」と呼ばれたりもします。
- グラスウール同様に吸音性能が高く、シロアリなどの害虫被害や火災にも強い特徴があります。
- グラスウールよりも水や湿気に強く、断熱性能低下が起こりにくいです。
- 耐火性能に優れていて、グラスウールは300℃以上で収縮し始めますが、ロックウールは700℃以上で収縮し始めます。
- グラスウールに比べてコストは若干割高です。
- グラスウールに比べて重量が重いため、施工技術が低い場合、脱落(ずれ落ちる)のおそれがあります。
- 熱伝導率は製品やグレードによって変わりますが、0.036~0.047W/(m·K)程度です。
肺がんなどの原因となる「アスベスト(石綿)」とはまったく別の素材だワン!
密度によって熱伝導率に幅があるワン!
- 吸音効果がある(高音域に効果的)
- シロアリなどの害虫被害に強い
- 水・湿気に強く、断熱性能低下が起こりにくい
- グラスウールよりも耐火性に優れる
- グラスウールに比べて価格が高い
- 重量があるため脱落のおそれがある
- 熱伝導率は0.036~0.047W/(m·K)程度
木質繊維系断熱材
セルロースファイバー
- 古紙や製紙に用いる素材を再利用して耐熱、撥水加工を施して作られた天然繊維の断熱材です。
- 細かく絡み合って形成している繊維の間の空気層だけではなく、天然の繊維のため1本1本の繊維の中にまで自然の空気胞があり、この空気の存在がより一層、熱や音を伝えにくくします。
- 木質繊維特有の調湿性で適度な湿度を保ちます。
- 無数の細かい連続気泡を吹き付けて断熱をしていく工法のため、細かい部分にも吹き付けることができ、隙間なく高い気密性を確保できます。
- 吸音性能に優れています。
- 害虫駆除にも使われているホウ酸が含まれており、害虫予防にも効果があります。
- 価格が割高で、グラスウールの倍程度の価格になる場合もあります。
- 熱伝導率は0.04W/(m·K)程度です。
特殊な工法だから専門業者を探す必要があるワン!
- 天然素材のため地球環境に優しい
- 調湿性が高い
- 高い気密性を確保できる
- シロアリなどの害虫被害に強い
- 価格が高い
- 吸音性に優れている(中高音域に効果的)
- 熱伝導率は0.04W/(m·K)程度
インシュレーションボード
- 木の繊維から製造したのもので、木材を細かく粉砕して接着剤などを混ぜて型にはめて形成し、乾燥させたボード状の断熱材です。
- 断熱性と吸音性に優れており、軽くて加工や施工がしやすいため様々な部分に用いられます。
- シロアリに弱く、木質繊維系のため耐火性能も高くありません。
- 透湿性を持つことから結露防止に役立ちますが、原材料が木材であるため、水や湿気に弱くカビやすいという欠点もあります。
- 熱伝導率は0.04W/(m·K)程度です。
欠点を補うため、インシュレーションボードにアスファルトを塗ったり、染み込ませたりして耐水性を増したシージングボードというものがあるワン!
- 天然素材のため地球環境に優しい
- 吸音性に優れている(中高音域に効果的)
- 水や湿気に弱い
- シロアリなどの害虫被害のリスクがある
- 熱伝導率は0.04W/(m·K)程度
②発泡プラスチック系の断熱材
ビーズ法ポリスチレンフォーム
- 粒状のポリスチレンを型にはめて発泡させる製造方法で作られる断熱材で、「EPS」とも呼ばれます。
- 軽量で加工が容易です。現場においてもカッターなどで切断できるため施工性が良いです。
- 耐水性があるため、水や湿気に強い特徴があります。
- 熱に弱く防火性に難があります。
- 断熱性能は無機繊維系の断熱材と同じくらいでありますが、価格は無機繊維系よりも割高となります。
- 発泡プラスチック系断熱材の中では安価です。
- シロアリの食害に遭う可能性があるため、防蟻対策が必要です。
- 熱伝導率は0.034~0.043W/(m·K)程度です。
みんながよく知っている発泡スチロールのことだワン!
規格によって熱伝導率に幅があるワン!
- 施工がしやすい
- 水や湿気に強い
- 無機繊維系断熱材に比べて価格が割高
- シロアリ対策が必要
- 熱に弱い
- 熱伝導率0.034~0.043W/(m·K)程度
押出発砲ポリスチレンフォーム
- ポリスチレンを連続して発泡することでできる断熱材です。
- 「XPS」とも呼ばれ、断熱材の商品名だとデュポン・スタイロ社のスタイロフォームが有名です。
- プラスチックの粒がビーズ法より小さく、薄くても高い断熱性があり、水や湿気に強い特徴があります。
- 軽量で加工が容易で、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドを含んでいないため安全性に優れています。
- シロアリの食害に遭う可能性があるため、防蟻対策が必要です。
- 熱に弱く防火性に難があります。
- 熱伝導率は0.022~0.043W/(m·K)程度です。
規格によって熱伝導率に幅があるワン!
スタイロフォームFGという熱伝導率が0.022と非常に低い商品があるワン!
- 水や湿気に強い
- 施工がしやすい
- 熱に弱い
- シロアリ対策が必要
- ホルムアルデヒドが入っていない
- 熱伝導率は0.022~0.043W/(m·K)程度
硬質ウレタンフォーム
- ポリイソシアネートとポリオールという主剤に発泡剤、製泡剤などを混合することにより発泡して製造される断熱材です。
- 小さな硬い泡の集合体で、一つ一つの泡の中に熱を伝えにくいガスが封じ込められているため、発泡プラスチック系断熱材の中で最も優れた断熱性能を有しています。
- 透湿性や耐久性に優れています。
- 価格が高く、万が一燃えてしまった場合に有毒ガスが発生するリスクがあります。
- ボード状の断熱材と、施工箇所に直接吹き付けて発泡させる工法があります。
- 現場発泡の場合は、多くの材料に自己溶着するため複雑な構造物に対しても隙間のない連続した断熱層を作ることができます。
- 現場発泡の場合は、既製品ではなく現場で作業員が吹き付けるため、業者の施工レベルにより品質にバラつきが出るおそれがあります。
- シロアリの食害に遭う可能性があるため、防蟻対策が必要です。
- 熱伝導率は0.019~0.040W/(m·K)程度です。
現場発泡は、羽子板ボルトなどの金物に吹き付けることでヒートブリッジを防ぐことができるワン!
規格によって熱伝導率に幅があるワン!
ヒートブリッジとは、建物の中で局部的に熱を伝えやすい部分のことです。金物などの金属は熱伝導率が高いため熱が室内に侵入しやすい箇所となります。そこに発泡ウレタンを吹付けることで熱を遮断することができます。
- 断熱性能が高い
- 価格が高い
- シロアリ対策が必要
- 隙間なく断熱材を充填できる
- 耐久性が高い
- 熱伝導率は0.019~0.040W/(m·K)程度
フェノールフォーム
- フェノール樹脂というものに発泡剤を混ぜ、硬化剤などを加えてボード上に形成したものです。
- 耐火性にとても優れており、炎を当てても有害物質がほとんど出ないため、不燃・準不燃材料の大臣認定を受けています。
- 微細な気泡に高断熱ガスを密閉することで非常に高い断熱性を持つ断熱材で、薄くても十分な断熱性能を発揮します。
- 他の断熱材に比べて価格がとても高くなっています。
- シロアリの通り道になるおそれがあるので防蟻対策が必要です。
- 熱伝導率は0.019~0.040W/(m·K)程度です。
規格によって熱伝導率に幅があるワン!
- 熱に強い
- 断熱性能が高い
- シロアリ対策が必要
- 価格がとても高い
- 熱伝導率は0.019~0.040W/(m·K)程度
③天然素材系の断熱材
羊毛
- ウールブレスとも呼ばれ、原料には羊毛(ウール)が使用されています。
- 天然の岩塩から抽出されたものなど、体に優しい防虫処理が施されており、防虫効果は半永久的に続くともいわれています。
- 羊毛の細かな繊維が絡まりあうことで高い断熱性能を持つとともに、調湿性に優れた特徴があります。
- シックハウスの原因となるホルムアルデヒドを含んでいないため安全性が高いです。
- 羊毛は国産が少ないためほとんどが海外からの輸入品となり、価格も他の断熱材に比べると高くなります。
- 熱伝導率は0.040W/(m·K)程度です。
天然素材だから体に優しいワン!
- 防虫効果がある
- 調湿性に優れる
- ホルムアルデヒドが入っていない
- 価格が高い
- 熱伝導率は0.040W/(m·K)程度
炭化コルク
- ワインのコルクなどを製造する際の端材を加工し、炭化させた断熱材です。
- 素材の中にたくさんの空気を含んでおり、断熱性や調湿性に優れています。
- 原料のコルク樫には自然由来の防虫効果があるためダニを寄せつけません。
- シックハウスの原因となるホルムアルデヒドを含んでいないため安全性が高いです。
- 環境に優しい素材ですが価格は高くなります。
- 熱伝導率は0.040W/(m·K)程度です。
吸着性能があるからホルムアルデヒドなどの有害物質を吸着して除去する働きがあるワン!
- 調湿性に優れる
- 防虫効果がある
- ホルムアルデヒドが入っていない
- 価格が高い
- 有害物質を除去してくれる
- 熱伝導率は0.040W/(m·K)程度
まとめ
断熱材ごとに様々な特徴があり、断熱性能・製品代・施工費用などにも差があるため、一概にどの断熱材が優れているとは断言できません。
断熱性能には「熱伝導率×断熱材の厚さ」の数値である熱伝導抵抗というものが重要となってくるため、熱伝導率についても単純に数値の大小だけで比較するのではなく、断熱材の厚さも考慮しましょう。
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